片方になった卵巣のように
大学生の時、卵巣の手術をした。
卵巣嚢腫という病名で、右の卵巣が赤ん坊の頭ぐらいに腫れていた。
右の卵巣と卵管を手術によって切除したため、卵の数が半分になり、毎月左右の卵管から交互に行われる排卵も、私の場合は、隔月になると医師からいわれた。
要するに妊娠の確率が半減したということである。
このため、見合いの相手からも、書類選考の段階で何度か落とされたりした。
しかるにである。
隔月のはずの月経も毎月あり、またか、というくらい何度も妊娠し、そして生まれた3人の男子は、今では立派な成人になった。
残った卵巣が2つ分以上の働きをしてくれた、としか言いようがない。
通常2つあるはずのものの片方が欠けると、その力は半分になる、とは誰もが思うことである。けれど、2つあるはずのものが、1つになった時、残ったその1つが2人分以上の働きをすることが、自然界にもあるらしい。
片親になり、一人で子供を育てなければならなくなった時、私はこの片方になった卵巣を思った。
頼るものがなくなり、自分一人で頑張らねばならないと思ったとき、たとえ一人でも、二人分以上の力が発揮できる。片親でも、立派に子供を育てよう。
そう思って32年間、single working motherを勤め続けた。
片親家庭、いまはひとり親家庭というらしいが、マスコミで取り上げられているのを見て、
ちょっと今日は、このことを書いてみたかったのである。