苦渋の選択
87歳になる母が食事を取らなくなった。
みんなが食べろ食べろというと、余計食べたくなくなる。
とか言って、水分もほとんど取らない。
しかたなく入院した病院で、すぐに遺漏を勧められた。
「ええっー胃に穴を開けるの?」
いろいろとネットで調べたけれど、賛否両論で、結局手術をしたほうがよいのか、悪いのか、納得のいく答えは見つからない。
子供がしなければいけない決断としては、過酷な選択である。
このまま食べないまま衰弱していくのを見守るか。
病院でできる限り、点滴を続けるか。
遺漏をして、食べなくても栄養補給ができるようにするか。
「かわいそうよ。遺漏なんか、植物人間になってしまうよ。」
とかいう意見をしりめに、私一人で手術を決断した。
子供の気持ちとしては、少しでも命を長らえてほしい、と願うのがあたりまえだけれど、母の人生を考えたときに、胃に穴をあけてまで、生きながらえた方がしあわせなのかどうか。
幸い手術も簡単に終わり、今では、好きなものだけを口から食べ、足らない栄養はチューブで入れてもらっている。
顔色もよく、以前より食欲も出てきたようで、ほっとしている。
よかった。わたしの選択は間違っていなかった。
けれど、自分の息子たちには、
「おかあさんの時は、絶対にしないでほしい。」
と、今から断言しておいた。