恋い慕う 想い人 2
5歳年上だった人が、17歳年下になった。
その人が往って22年、
知り合って過ごした年月の2倍以上を、一人で生きてきたことになる。
新採用で始めて赴任した学校で、隣の席の先生だった。
同じ副担任だったため、何でも見習って仕事を覚えた。
「一晩付き合うか。」
そう言われて、ドキドキしてついていくと、
夜釣りだった。
「ちょっと針を照らしてくれ」
とか言われて、
ライトを照らしたり、釣れた魚を網ですくい上げたりした。
それからもよく海辺について行き、釣り糸をたらしている間、
テトラポットに寝そべって、魚が釣れるのを待っていた。
「もし二人が会えなくなったら、海に来ましょうね。」
と言っていたら、本当に二度と会えなくなってしまった。
日曜日の午後、将棋のテレビを見ながら、突然息が絶えてしまったという、
微笑んでいた死に顔が、参列者の涙を余計にさそった。
その人が往って、今年で23回目の命日がくる。
「お前に泣かれるのが一番つらい。」
そう言ってくれたやさしい声が、今も聞こえてくるようで、
今でも時々、海に行く。