さらば愛犬金太郎
愛犬金太郎が死んだ。
去年の桜花舞い散る頃だった。
もともと腎臓やら肝臓やらが悪く、家に来た時から、余命いくばくかといわれていたそうである。
これは、あとで聞いた話だが。
迷い犬であった。
見つけた息子は、必死で飼い主を捜した。
心当たりに電話をかけまくり、耳の手術のあとから、すべての獣医を訪ねて、
飼い主の情報を得ようとしたが、わからなかった。
保健所に保護されたが、そのままでは殺されるからと家に連れて来たのだった。
おとなしい、やさしい犬で、誰にでもよくなつき、彼が怒ったりしていたところは
見たことがない。元々飼っていた2歳になる雌犬が、彼のエサを取ったり、いじわるとしたりしても
少しも嫌がらず、されるままになっていた。
その彼が少しずつ弱ってきた。
食べるのが大好きだったのに、エサを食べなくなり、よろよろ歩いていたと思うと、
立ち上がることもできなくなった。
2週間ほど、毎日点滴を打ちに行っていたが、ついに危篤となり、舌も垂れ下がってガーゼで当てた水も飲めなくなった。
息子は3日間、仕事を休んでつきっきりで抱き続けていたが、ついにその朝、金太郎は冷たくなっていた。
息子は一人でペットの葬儀屋に行き、葬式を済ませて、骨の一部をペンダントに入れてもらって帰ってきた。
去年の4月11日のことである。
金太郎、毎年、桜が舞うと君のことを思い出すよ。
これからもずっとだよ。